脳と発達
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唾液中濃度測定にもとつくPhenobarbitalの体内速度論とその臨床への応用
西原 カズヨ幸田 幸直斎藤 侑也本多 裕中川 富士雄
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1979 年 11 巻 6 号 p. 604-610

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抄録
henobarbital (PB) を服用中のてんかん患者, およびPBを1回および繰返し投与した健康被験者で混合唾液中PB濃度 (Cs) と唾液pHを測定し, Matinらの式を用いて血漿中非結合形PB濃度 (Cf) を推定した.
1.てんかん患者で測定した血漿中総PB濃度 (Ct) とCfとの問には有意な相関関係が認められた.CsとCfの間には有意な相関関係が認められたが, Cs/Cf比は0.59にすぎなかった.一方, Csから推定したCf推定値 (Cest・f) とCfとの問には高度に有意な相関関係が認められ, Cest・f/Cf比は1.00であった.
2. 健康被験者にPB50mgおよび100mgを間隔をおいてそれぞれ1回投与して経時的に唾液採取を行ない, えられたCs測定値から求めたCest・fの時間的推移は三つの指数関数の和より成る式であらわすことができ, PBの体内動態には1次速度過程の吸収を伴うtwo compartment modelによる解析が適切であることが確認された.最高濃度到達時間は投与して約2時間後で, 消失半減期は約67時間であった.
3. 健康被験者にPB50mgを12時間ごとに繰返し投与して観測したCest・fは, 1回投与によるCest・fのデータから薬物速度論による理論計算によって求めた予測値とよく一致した.
Csの測定は従来行なわれているCt測定に代替できるばかりでなく, 薬効に関係深いCfを推定できるので薬物治療上有用性が高い.また, 患者個人個人について経時的にCsを測定することはPBの体内動態を明らかにするための手法であり, 薬物速度論にもとづく適正な投与計画を設定する上で有用な方法である.
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© 日本小児小児神経学会
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