抄録
1963年1月より1975年12月までに慶大小児科において経験し, 3年から15年にわたり経過観察しえた定型欠神発作30例につき, 脳波上の発作間歓期発性異常波の変容を中心に臨床発作の転帰, 知能障害の有無を含め予後を検討し次の成績を得た.
1) 調査時臨床発作は全例消失していた.これを発作消失期間別にみると, 3年以上総数30例中22例 (73%), 2年11ヵ月~2年5例 (17%), 1年11ヵ月~1年2例 (7%), 1年以内1例 (3%) であり, 2年以上発作消失率は90%であった.臨床発作抑制の難易は, 性別, 熱性けいれんあるいは大発作の既往歴の有無, 定型欠神発作の発症年齢, treatmentlagの長短との間には明らかな関連を認めなかった.なお, 経過観察中大発作の合併や他の臨床発作型への変容を認めなかった.
2) 調査時知能は, 総数30例中正常29例 (97%), 軽度遅滞1例 (3%) であった.
3) 覚醒閉眼および3分間の過呼吸賦活時の発作間歓期全般性発作性異常波の変容は4型に類型化された.すなわち, 3c/sec棘徐波複合がそのまま消失総数30例中12例 (40%), 3c/sec棘徐波複合が一旦消失あるいはそのまま速棘徐波あるいは不規則棘徐波複合に変容後そのまま持続あるいは消失14例 (47%), 3c/sec棘徐波複合が持続2例 (6.6%), 速棘徐波あるいは不規則棘徐波複合が持続あるいは消失2例 (6.6%) であり, 前2者の変容型が全般性発作性異常波の変容の大多数を占めた.なお, 全般性発作性異常波の変容類型と性別, 熱性けいれんあるいは大発作の既往歴の有無, 定型欠神発作の発症年齢, 臨床発作持続期間, 発作消失期間, treatment lag, 投与薬剤の種類などとの間には一定の関連は認められなかった.
以上の成績をもとに, 定型欠神発作の脳波所見の推移につき文献的考察を行なった.