脳と発達
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小児てんかんにおけるミオクロニー発作の予後
3年以上経過観察例について
関 亨山脇 英範鈴木 伸幸
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1981 年 13 巻 1 号 p. 3-10

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抄録

要旨1963年1月より1975年5月までに慶大小児科において経験し, 3-14年にわたり経過観察しえたミオクロニー発作20例 (男子11例, 女子9例) を臨床経過により下記の4病型に分類し, 臨床発作の転帰, 脳波所見 (基礎波, 発作性異常波) の変容, 知能・発達障害の有無につき検討した.
I型: ミオクロニー発作のみの経過 (10例, 50%).
II型: 大発作→ミオクロニー発作 (2例, 10%).
III型: Lennox症候群の一部発作型としてのミオクロニー発作 (3例, 15%).
IV型: 点頭てんかん→ミオクロニー発作±他の発作型 (5例, 25%).
1) 臨床発作の転帰
調査時20例中発作消失15例 (75%), 減少3例 (15%), 不変2例 (10%) であった. 発作消失例を発作消失期間別にみると, ≧3年7例 (35%), 2年11カ月-2年1例 (5%), 1年11カ月-1年3例 (15%), 1年以内4例 (20%) であり, 2年以上発作消失率は40%であった. 2年以上発作消失例を臨床病型別にみると, I型+II型は12例中7例 (58%) と半数強を占めたのに対し, III型+IV型では8例中1例 (13%) のみであったが, 推計学的には両者の間に有意差を認めなかった. また, 2年以上発作消失例は, 知能・発達正常例では8例中6例 (75%), 遅滞例では8例中2例 (25%) であり, 両者の間には推計学的に有意差を認めなかった. なお, 経過観察中全例に他の臨床発作型の出現を認めなかった. 合併発作型は, 症例により不変, 減少あるいは消失を示したが, ミオクロニー発作の消長とほぼ同様の傾向を示す症例が多かった.
2) 脳波所見
最終脳波記録における覚醒時基礎波は, 正常2例 (10%), slightdysrhythmia11例 (55%), moderate dysrhythmia 4例 (20%), marked dysrhythmia 3例 (15%) であり, 初回脳波所見に比し大差のない成績であった. なお, 臨床病型別では, I型, II型はslight dysrhythmiaが多数を占めたが, IV型は全例moderateあるいはmarked dysrhythmiaを示した.最終脳波記録における発作性異常波は, 全般性の多棘徐波複合, 速棘徐波複合, 遅棘徐波複合, modified hypsarhythmia, 局在性棘波などを含め20例中13例 (65%) に認められた. また, 2年以上発作消失例8例中4例 (50%) に発作性異常波の出現があり, これは1年11ヵ月以内発作消失例における発作性異常波の出現率と明らかな差異を認めなかった. なお, 臨床病型別の発作性異常波の出現率は, IV型に多い傾向も認められたが, いずれも少数例のため明確ではなかった.
3) 知能・発達
正常8例 (40%), 境界2例 (10%), 遅滞10例 (50%) であり, I型, II型は正常例が多いのに対し, III型, IV型では遅滞例が多数を占めた.
以上の成績をもとに, ミオクロニー発作の予後につき若干の文献的考察を行ない, 著者らのIII型, IV型はcortico-centrencephalic or subcortico-centrencephalic epileptic mechanismに属し, I型, II型はcentrencephalic epi1eptic mechanismあるいはcortico-centrencephalic or subcortico-centrencephalic epileptic mechanismのいずれかに属するであろうと推測した.
なお, 今回著者らはミオクロニー発作を臨床病型I-IV型に分類し分析を行なったが, いずれも少数例のため明確さを欠く点があり, この点は今後例数が増加した段階で再検討を行なう予定である.

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© 日本小児小児神経学会
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