脳と発達
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小児の飢餓状態における抗てんかん剤血中濃度の変動に関する検討
原 美智子
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1982 年 14 巻 2 号 p. 194-204

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抄録

薬物の血中濃度は, 生体の種々の生理的状況下で変動しうる. 本研究は, 飢餓状態における抗てんかん剤の血中濃度の動態を, 難治性てんかん児のケトン食療法飢餓期間において観察した.同時に, 飢餓により生ずる各種代謝, 内分泌変化を観察し, 薬物代謝への影響を検討した.
飢餓開始前, 7日間完全飢餓期間並びにケトン食療法期間を通じ, 投与量に変更のなかったphenobarbital, phenytoin, carbamazepine, sodium valproate, ethosuximideの血中総濃度を酵素免疫アッセイ (EMIT) 法またはガスクロマトグラフィー法により経時的に測定した.
飢餓期間にcarbarnazepineを除くすべての薬剤血中濃度の著明な上昇を認めた.飢餓後期にピークを示すものが多く, sodium valproateは, 最高飢餓前値の2.5倍の上昇を示した.飢餓時の抗てんかん剤血中濃度上昇の機序として, 飢餓時に存在する甲状腺機能低下症 (starvation hypothyroidism), エネルギー減少に基づく肝内薬物代謝酵素活性の低下などによる肝での薬物代謝の遅滞, 並びにケトージス利尿による体液量の減少に基づく血中濃度の増加が考えられた.
さらに, 飢餓開始後急上昇する血中遊離脂肪酸は, 抗てんかん剤のうち, 特にsodium valproateの遊離画分を増加させることが予想された.

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© 日本小児小児神経学会
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