脳と発達
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14 巻, 2 号
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  • 有馬 正高
    1982 年 14 巻 2 号 p. 88
    発行日: 1982/03/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
  • 特にB6依存症について
    多田 啓也
    1982 年 14 巻 2 号 p. 89-98
    発行日: 1982/03/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    生理的需要量を越えた多量のB6の投与により臨床症状ないし所見の改善がみられ, 投与を中止すると再び悪化するという一連の疾患をB6依存症と呼んでいる.これらB6依存症の多くは中枢神経症状を呈し多量のB6に反応するという点では共通であるが, それぞれの疾患で異なった1ヵ所の代謝過程の障害が推測され, 相互に重複はみられない.これは補酵素側の異常では説明困難であり, B6の関与するいずれかのアポ酵素の異常と考えるのが合理的である.この推測のもとに吾々は検索を進め, B6依存性痙攣ではグルタミン酸脱炭酸酵素, B6依存性サンツレン酸尿症ではキヌレニナーゼ, B6依存性高オルニチン血症ではオルニチントランスアミナーゼのアポ酵素に異常があり, ピリドキサル燐酸との親和性の低下が存することをinvitroで証明した.これらの研究成果を中心に中枢神経系症状発現の機作について述べた.
  • 脳性麻痺を中心として
    中村 隆一
    1982 年 14 巻 2 号 p. 99-104
    発行日: 1982/03/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    最近, 脳性麻痺をはじめとして発達障害児のリハビリテーションの重要性が高まっている.これまでのリハビリテーションでは, 障害児・者を社会へ統合するというリハビリテーション本来の目的は果たし得なかったという反省から, 新しく発達的アプローチが広く提唱されている.発達的アプローチは本質的には正常発達の促進の手段であり, 二次的障害の予防・軽減を目的としたものである.発達的アプローチがどのような原理にもとついたリハビリテーションであるのか, またその実施上, 問題となっているのは何か, などについて説明した.
  • 大田原 俊輔
    1982 年 14 巻 2 号 p. 105-106
    発行日: 1982/03/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
  • 飯沼 一宇
    1982 年 14 巻 2 号 p. 107-111
    発行日: 1982/03/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    発熱 (体温上昇) によって, 多くは遺伝的背景をもつけいれん素因と相俟って, けいれん閾値の低下が惹起され, 全身けいれん発作を生ずる純粋な形の熱性けいれんと, 脳に自発的発作放電をもつてんかんとの鑑別は容易ではない.しかし上記に述べたような純粋な熱性けいれんは従来の単純性熱性けいれんと呼ぼれるものに当るであろう. このような単純性熱性けいれんに合致しないものを非定型熱性けいれんと分類した. これは雑多なものを含んでいるであろう. そして間歇期脳波に明らかなてんかん性変化を有するならば, 脳の自発的発作放電の存在を想定し, 熱に誘発されたてんかんと考えたい.
  • 特に遺伝学的側面
    香川 和子, 竹重 博子
    1982 年 14 巻 2 号 p. 112-119
    発行日: 1982/03/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    熱性けいれんの病因では, 年齢, 発熱, けいれんをおこしやすさ (susceptibility) という3つの因子が重要である. 今回, 諸家の報告をもとに上記3項を中心にして熱性けいれんの病因をまとめた. 病因のなかでsusceptibilityが遺伝的に規定されるといわれており, その遺伝様式について検討した.
    症例は, 1974年対象例307例中, 7年後の1981年に追跡可能であった260例 (84.7%) で, 単純型117例, 複合型91例, てんかん性熱性けいれん52例であった. 今回は特に単純型+複合型について検討し, 多因子遺伝が最も示唆されたが, 一部優性遺伝, 劣性遺伝に適合する部分もあり, 家系毎に遺伝様式が異なる可能性も考えられ, 今後更に検討していく必要があると思われる.
  • 坪井 孝幸
    1982 年 14 巻 2 号 p. 120-123
    発行日: 1982/03/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    一定地域の3歳児全員を調査して得られた熱性けいれん1,123児と健康対照児群を対象として, 家系研究・双生児研究・疫学的研究を総合的に行ない, 熱性けいれんの遺伝形式の解明を試みた.
    1) 3歳児集団中の熱性けいれん罹病率は6.7%(1,123/16,806); 2) 熱性けいれん発端者の同胞の罹病率は20.7%(227/1,094, 兄弟21.4%, 姉妹20.1%);3) 同胞の罹病率は両親に既往がある場合32%, 健康の場合18%, 近親者に罹病者が2名あるとき45%, 1名のとき16%, ないとき0.8%;4) 双生児における一致率は1卵性46%, 2卵性13%; 5) 遺伝率は73%, 6) 集団, 家系, 双生児研究およびComputational model分析により, 多因子遺伝形式の妥当性が示された.
  • 山磨 康子, 河野 親彦, 伊予田 邦昭, 岡 英次, 大田原 俊輔
    1982 年 14 巻 2 号 p. 124-130
    発行日: 1982/03/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    6歳未満に初診し, 5年以上追跡しえた熱性痙攣263例 (うち250例は脳波学的にも追跡) につき脳波学的検討を行なつた.臨床的に脳障害を示唆する所見の有無および発作の性質により単純性と複雑性に分類すると, 狭義てんかん波は初回脳波でそれぞれ34.0%, 44.6%, 全経過を通じて56.8%, 71.8%の高率に検出され, 多数の症例においててんかん性機序の存在が示唆された.一方熱性痙攣症候群の中に少数ながら狭義てんかん波を伴わぬ一群があることも事実である.追跡研究の結果無熱性発作は7.6%に出現し, 18.4%では熱性痙攣が6歳以後も残存した.全経過を通じて“no spike”群には無熱性発作の出現はなく, 熱性痙攣の6歳以後の存続も3.9%にすぎず予後良好であった.一方狭義てんかん波を伴う群ではこれらがそれぞれ10.3%, 20.7%みられた.
    したがって熱性痙攣をriskfactor及び狭義てんかん波の存否により3つのカテゴリー, すなわち“simple”,“complicated”,“epileptic”に分類すべきと考える.
  • 黒川 徹, 松尾 誠
    1982 年 14 巻 2 号 p. 131-136
    発行日: 1982/03/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    熱性痙攣 (FC群) 185例, 熱性痙攣の既往を有するてんかん (FC-Ep群) 125例, 熱性痙攣の既往のないてんかん (Ep群) 340例を比較しつぎの結論を得た.
    1) 熱性痙攣の臨床的特徴.FC-Ep群はFC群に比し, てんかんの家族歴および発病前よりの発達遅滞および女児が多く, 0歳または2歳以後に始まり, 最終発作はより若年で熱性痙攣が終り, Epに移行した.
    2) FC群における脳波異常は1歳6%(棘波は6%), 2歳4%(4%), 3歳16%(16%), 4-5歳64%(47%), 6-7歳53%(45%), 8-9歳75%(63%), 10歳以上42%(42%) であった.
    3) FC-Ep群はEp群に比し, てんかんの発病年齢は1歳以下が少なく, 14-7歳が多く, 発作型は小発作, ミオクローヌスが多く, 点頭てんかんはなかった.FC群のてんかんへの移行は4%であった.
    4) 予後は, 発作がとまり服薬を中止しているものはFC群98%, FC-Ep群65%, Ep群52.1%で有意差があった.精神運動発達が正常であるものはおのおの91.7%, 77.4%, 65.9%で有意差があった.死亡率はおのおの2%, 3%, 9.1%であった.
  • Follow-up studyを用いての検索
    山村 均, 中西 雅夫, 吉水 俊一, 木村 敏
    1982 年 14 巻 2 号 p. 138-143
    発行日: 1982/03/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    熱性痙攣の予後特にてんかんとの関係を明らかにするために,「名古屋市小児心身発達追跡調査」の対象児2,005名を用いて検索を行なった. 15歳時検診までに得られた結果は,(1) 熱性痙攣児は対照児に比べて各年齢とも脳波異常を示す率が高い. (2) 熱性痙攣が低い発熱で発来した者に, 脳波異常が出現しやすい. (3) 父親に比べて母親に脳波異常を多く認める. 両親に脳波異常がある時には, 対象児も脳波異常を高率に示す. (4) 熱性痙攣児は対照児に比べて, 胎生期に何らかの障害を有することが多い. (5) 継時的脳波変化を見ると, 4-6歳, 11-14歳で脳波異常が高率となる. 焦点性棘波及び棘徐波結合を示す者は予後に問題が多い. (6) 無熱性痙攣を発症した症例は, 種々のrisk factorを有している. したがって熱性痙攣を単一のものと規定せず, てんかん好発時期以後までの長期にわたる追跡調査と, 必要に応じてこれらに対する予防的治療が必要であると思われる.
  • 隅 清臣, 滝沢 恭子, 清水 寛, 安部 治郎, 三牧 孝至, 藪内 百治
    1982 年 14 巻 2 号 p. 144-150
    発行日: 1982/03/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    熱性痙攣の予防的治療方針をたてるために熱性痙攣からてんかんへと移行した症例の危険因子を検討し, さらに熱性痙攣の再発予防効果を調べた.
    1) てんかん患児932例のうち, 熱性痙攣の既往をもつものは115例 (12.3%) であった.
    2) てんかんへ移行した熱性痙攣の約半数は危険因子を認めなく, てんかんへの移行の予測はきわめて困難である.
    3) 熱性痙攣のうち, 半身痙攣, 30分以上の発作または1歳未満で分娩障害, 発達障害, 年5回以上のいずれかをもつものには予防的治療が必要と考えられる.
    4) 危険因子が多いほどてんかんへ移行しやすく, また熱性痙攣からてんかんへの移行期間も短くなる傾向がある.
    5) 有効血中濃度を維持すれば, 熱性痙攣の予防的治療効果は期待できる.
  • 唐橋 実
    1982 年 14 巻 2 号 p. 151
    発行日: 1982/03/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
  • 三宅 捷太
    1982 年 14 巻 2 号 p. 152-155
    発行日: 1982/03/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    てんかん診療に関しての小児科医の認識を調査した. 予防注射の許可は, BCG, ポリオ, 三混は約3/4以上の医師が許可し麻疹は約1/2であり, 病院勤務医, 50歳未満の医師, てんかん診療経験の多い医師に許可しない傾向が認められた.
    病名告知は85.4%の医師が工夫して話す, しかも医師と親が同じ場が望ましい (57.4%) と している.その時期は小学校中学年を中心に病院勤務医は診療所医より, より高年齢で話す傾向を示した.学校への連絡を70.5%がするとしたが, 残りは消極的であった.
    運動や行事の参加は病院勤務医, 50歳未満の医師, 経験の多い医師はより多く許可を与えていたが, 15種目平均は58.8%と低値であった.医師, 教師, 家族, 本人, その他の相互の交流がのぞまれた.
  • 関 亨, 山脇 英範, 鈴木 伸幸
    1982 年 14 巻 2 号 p. 156-162
    発行日: 1982/03/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    てんかん児に対する予防接種の問題点につき, 現在までにえられた知見の概要および日本小児神経学会評議員のうち小児科関係の方々の御協力によるアンケート調査成績を述べ, これらをふまえて現時点におけるてんかん児に対する予防接種対策案を述べた.
    てんかん児に対していたずらに予防接種を回避することには問題がある.予防接種の種類による有効性, 必要性, 副反応の強弱, およびてんかん児の個体側要因との組合せによって個々の予防接種施行の可否を決定すべきであり, 本問題につき行政へのすみやかな反映を切に望むものである.
    なお, てんかん児に対する予防接種は集団接種ではなく, 個別接種で行なうことはいうまでもないことである.
  • 清水 寛, 津田 直樹, 藪内 百治
    1982 年 14 巻 2 号 p. 163-165
    発行日: 1982/03/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    原則として6ヵ月以上臨床発作のない小児てんかん110例 (大発作型60例, 小型運動発作型28例, 焦点発作型19例, 純粋小発作3例) に対し水痘, 麻疹, 風疹, 流行性耳下腺炎, 日本脳炎, インフルエンザ, ジフテリア, 百日咳, 破傷風BCGの各ワクチンを計445回行なった.副反応は32/445 (7.2%) に認め, そのほとんどが発熱であり, 痙攣は7例にみられ全例発熱時, 一過性に出現した.ワクチン接種前後の脳波変化は, 変化なし83/110 (75.5%), 悪化14/110 (12.7%), 改善13/110 (11.8%) であった. 水痘, 麻疹, 風疹, 流行性耳下腺炎ワクチンでの血清抗体獲得率は健康児のそれと同程度であった.
  • 高木 俊一郎
    1982 年 14 巻 2 号 p. 166-171
    発行日: 1982/03/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    てんかん児の脳波に与える運動, ことに水泳の影響を客観的に研究すると同時に, 親・教師のてんかん児に対する理解や態度, 学校における運動, その他行事への参加状況を把握し, さらに, 水泳指導に当っての条件などを検討した.その結果, 運動, ことに水泳はてんかん児の脳波, ひいてはてんかん発作に対し, とくに悪い影響を与えることはなく, むしろてんかん児に対する積極的な指導の方法などにつき研究すべきであるとの結論を得た. しかし, これが適確になされるためには, 種々の類型, 程度, 刺激などを組合せたきめ細かい研究がつづけられねばならない.われわれは現在, 医療関係者, 教育関係者, 学生, 親などの協力の下に本研究を継続中である.
  • 学校におけるてんかん児の保健管理の現状, 及び小・中学校教員の本症についての認識
    向井 幸生, 二宮 真奈美
    1982 年 14 巻 2 号 p. 172-178
    発行日: 1982/03/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    163名の養護教諭を始めとする小・中学校の現職教諭を調査対象として, てんかん児の保健管理・保健指導に関する質問紙調査を行ない, 概略次のような調査結果を得た. 著者らは昭和45年にも同様の調査を行なっており, その時の調査結果と, 今回のそれとを対比させながら報告した.1) 今回の調査においては, 前回調査に比し可能な限りスポーツを奨励すべしとする教員が多かった.2) 一方, またてんかん児の予防接種等に関連して, 学校においてもdefensive medicine保身医療が徐々に浸透しつつあることをうかがわせる調査結果が得られた.3) 10年前に比較すると, 今日の教員の本症についての考え方は, 全般的にかなり適切な方向へ変容してきていることがわかった.しかし, 今日の小児神経学の常識に徴して不適切と思われる考え方も, まだ根強く残っているようである.学校におけるてんかん児の保健管理を充実させるためには, 専門医から教員への働きかけがさらになされなければならないであろう.
  • 原 美智子
    1982 年 14 巻 2 号 p. 179-193
    発行日: 1982/03/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    生体の低エネルギー状態における甲状腺ホルモン動態を明らかにするために, 小児に, てんかんの治療目的で行なった180時間完全飢餓並びにケトン食療法期間において, 甲状腺ホルモンの測定を行なった.
    飢餓初期に, 末梢性甲状腺ホルモン抑制を, 次いで血中TSH低値を伴う中枢性甲状腺機能低下を認めた. 血中T3濃度は前値の約80%の減少を示した.
    ケトン食摂取後, 血中TSH, 甲状腺ホルモンの可逆的上昇が観察された.
    ヒト飢餓において初めて発見したこの著明な甲状腺ホルモン抑制は, 疾患としての病的変化ではなく, 低エネルギー状態において体内エネルギーを節約し, 蛋白異化作用を防止する, 生体の合目的的反応であると考えた.
    著者は, 特にこの一連の現象をstarvation hypothyroidismと名づけた.
    成人の飢餓において一般的に観察されている血中T3低下, rT3上昇を伴ういわゆるlow T3 syndromeは, 本症の軽度もしくは初期の反応であると考える.
  • 原 美智子
    1982 年 14 巻 2 号 p. 194-204
    発行日: 1982/03/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    薬物の血中濃度は, 生体の種々の生理的状況下で変動しうる. 本研究は, 飢餓状態における抗てんかん剤の血中濃度の動態を, 難治性てんかん児のケトン食療法飢餓期間において観察した.同時に, 飢餓により生ずる各種代謝, 内分泌変化を観察し, 薬物代謝への影響を検討した.
    飢餓開始前, 7日間完全飢餓期間並びにケトン食療法期間を通じ, 投与量に変更のなかったphenobarbital, phenytoin, carbamazepine, sodium valproate, ethosuximideの血中総濃度を酵素免疫アッセイ (EMIT) 法またはガスクロマトグラフィー法により経時的に測定した.
    飢餓期間にcarbarnazepineを除くすべての薬剤血中濃度の著明な上昇を認めた.飢餓後期にピークを示すものが多く, sodium valproateは, 最高飢餓前値の2.5倍の上昇を示した.飢餓時の抗てんかん剤血中濃度上昇の機序として, 飢餓時に存在する甲状腺機能低下症 (starvation hypothyroidism), エネルギー減少に基づく肝内薬物代謝酵素活性の低下などによる肝での薬物代謝の遅滞, 並びにケトージス利尿による体液量の減少に基づく血中濃度の増加が考えられた.
    さらに, 飢餓開始後急上昇する血中遊離脂肪酸は, 抗てんかん剤のうち, 特にsodium valproateの遊離画分を増加させることが予想された.
  • 正常児の両耳分離能検査による検討
    林 雅次
    1982 年 14 巻 2 号 p. 205-221
    発行日: 1982/03/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    正常児 (3-12歳) の言語機能の一側化の発達を, 聴覚の左右差を指標にして検討するため, 有意味語と無意味語の両耳分離能検査を行ない, 次の結果をえた.
    1. 両耳反応は, 有意味語では幼児期よりも, 6-8歳の学童期に飛躍的に増大したが, 無意味語では, 5歳まで反応がなく, その後も徐々にしか増大しなかった.また男・女児間に有意の差をみなかった.
    2. 合成反応は, 有意味語ではまれであったが, 無意味語ではどの年代にも高率にみられた.
    3. 右耳反応が左耳反応より有意に多く, 3歳児で既に右耳優位を示した.
    4. 側性指数は各年代間及び男・女児間に, 有意の差を示さなかった.
    以上の結果から, 両耳分離能の発達は, 音素の弁別能力だけでなく, 意味の習得や認識能力の発達と深く関係しており, また3歳における右耳優位は, 言語機能の一側化が3歳ないしそれ以前に生じている事を示唆するものであり, 従来の等能仮説は修正される必要のある事を指摘した.
  • 筋組織像を中心として
    宇根 幸治, 佐藤 親子, 原口 宏之, 佐伯 満, 高松 鶴吉
    1982 年 14 巻 2 号 p. 222-224
    発行日: 1982/03/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    生下時より発症したと思えるfibrodysplasia ossificans progressivaの13歳女児例の筋生検所見について報告した. 光顕所見では結合組織内に多数の石灰化が存在したが, 筋線維内には, Ca沈着はみられず, 筋線維の破壊像, 炎症像もなかった。ヒストグラムでは, タイプ1線維が小径で, タイプ2B・2C線維の増加がみられた. このような筋線維タイプの分布, 径の異常は, 従来の廃用性萎縮像とは異なり, 本症に筋成熟の障害が存在することを示唆する所見とも考えられた. 結合組織のcouagenのaxial periodicityは, 64-65μmで正常構造を示した.
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