1987 年 19 巻 2 号 p. 150-156
ミトコンドリアの遺伝は母性遺伝と細胞浮動に集約される.受精機構により, 子のミトコンドリアは母親由来のものだけである.したがって母親がミトコンドリア異常であれば子は娘, 息子を問わずミトコンドリア異常になると予想される.しかしミトコンドリアは各細胞内に多数存在するため, 体細胞分裂の際親細胞から娘細胞へ確率的に伝わる (細胞浮動).この結果, 母親由来のmtDNA変異遺伝子が細胞内から消失あるいは固定することになる.ミトコンドリア異常の臨床症状の多様性はおそらくこの細胞浮動で説明できよう.家系分析の例としてミオクロナスてんかんの家系を取り上げ, 簡単な尤度法で母性遺伝を示して今後の研究を考察した.