抄録
ムコリピドーシスIII型 (ML-III) の2家系3症例を経験した. 症例1は15歳の男児で, 生後3カ月から進行する高度の脊柱側彎および後轡, 全身の関節拘縮, 発育発達障害, 心雑音, 肝腫大, 鼠径ヘルニアと多彩な症状を示した. 一方, 症例2は13歳の男児で, 軽度の関節拘縮と弱視が主な症状で, その姉 (症例3, 15歳) はほとんど無症状であった. 症例1はムコリピドーシスII型 (ML-II) とML-IIIの中間的症例と考えられ, 症例2・3は生化学的にML-IIIに合致するものの臨床的には極めて軽症の例と考えられた. これらの症例の存在から, ML-II・IIIを単一疾患としてI-cell病の乳幼児型・若年型ととらえることを提唱したい.