脳と発達
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行動の障害 1) 多動児の療育
診断概念と薬物治療について
原 仁
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1994 年 26 巻 2 号 p. 169-174

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抄録

米国精神医学会の診断基準における多動児診断の変遷, すなわち注意欠陥障害から注意欠陥・多動障害へ, を批判的に展望した. 世界保健機構の診断基準第10版 (ICD-10) の新しい多動児の診断概念である多動性障害に基づくと, 4から6歳までの時点での通常の健診において, 122例の極小未熟児 (出生体重1,500g未満) 中12例 (9.8%) に多動性障害を認めた. 学校の休暇中の休薬である「drug holiday」法は, 子どもの中枢刺激剤への反応を再確認できるばかりか, 成長障害の副作用も避けることができるため推奨される. 多動への薬剤治療に反応した3典型例を示した. 症例1は19歳の男性で, 自閉傾向とチック症状を示していた. 10歳から13歳までpemolineが投与されたが, 副作用はなかった. 症例2は15歳の男児で, てんかん性脳波異常を示していた. やはり, pemolineが6歳から10歳まで処方された. 薬剤処方後2カ月で二次性全般化を伴う部分発作が発症した. 抗けいれん剤carbamazepineの追加で発作の再発は防ぎ得た. 症例3は13歳の男児で, 夜尿症と数回の熱性けいれんがあった. 4歳から6歳まで, 三環系抗うつ剤であるclomipramineが投与された.本薬剤は多動とかんしゃくには著効したが, 夜尿症には無効であった.

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© 日本小児小児神経学会
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