抄録
昭和62~63年に施行された先天性水頭症全国疫学調査の結果, 先天性水頭症および生後1年以内に診断された続発性水頭症の年間受療患者数は3,200~3,500人と推定され, 出生1,000に対する発生率は0.6と計算された.二次調査の有効回答例1,331人を対象として以下の臨床疫学的検討を行った. (1) 正期産児と早期産児の疫学像の相違- 在胎週数37週未満の期産児は22.9%を占めた.正期産児では原発性水頭症が70.9%を占めたが, 早期産児では原発性および続発性水頭症の割合はほぼ同数であった.原発性の場合, 合併する中枢神経系奇形では神経管閉鎖不全は正期産児に多かった.続発性水頭症の原因では頭蓋内出血は早期産児に多く, 一方頭蓋内感染症は正期産児に多かった. (2) 近年の水頭症の傾向一出生年を4群に分けて比較した結果, 早期産児の割合は近年になるほど上昇し, 続発性水頭症の原因は近年になるほど頭蓋内感染症が減少し, 頭蓋内出血が増加した.手術合併症は近年になるほど減少していた. (3) 診断基準に基づいた難治性水頭症の特徴一調査研究班の作成した難治性水頭症の診断基準をあてはめると難治性群は35.5%となった.難治性群では続発性水頭症の割合が高く, 原発性の場合には高度の中枢神経系奇形を伴う場合に難治性群が多かった.手術合併症を伴う場合には難治性群が多く, 手術回数1回のみおよび発症から手術までの期間が1カ月未満の症例は非難治性群に多かった.