1996 年 28 巻 2 号 p. 156-162
7歳以上の重症心身障害児10例の日常における聴覚弁別能力を評価するため言語音刺激を作成し, 受動的事象関連電位 (ERP) を記録した.対象例の言語音刺激によるmismatch negativity (MMN) の出現率は低いものの何らかの刺激音に対して9例にMMN電位が得られた.臨床的に聴覚反応の認められない症例にも言語性MMNを得ることができ,(1) 音の種類によっては周波数の差を弁別できること,(2) 症例ごとに認知しやすい音声があることを推測させる結果であった.今回の検討から, 刺激音声を工夫した受動的ERPによって聴覚反応不良例における現実的な認知機能が評価可能であると思われた.