脳と発達
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出産時脳障害による不随意運動
児玉 和夫
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1997 年 29 巻 3 号 p. 220-226

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抄録
出産時脳障害による不随意運動を自験例の臨床経過から分析した. これらの症例はいずれも成熟児仮死分娩であった. 新生児期から乳児期初期にかけての頭部CTやMRIでは, 視床・被殻を中心とした基底核の変化を示す群と, 広範な低吸収域を示す群があった. 後者はその後画像上は改善していった例と, 白質が嚢胞状に崩壊していく例とに分かれた. 基底核変化群ではアテトーゼ様の不随意運動が中心になるが, 大脳白質障害が目立つと痙性麻痺の要素が混じてくる. こうした症状はほぼ正常から最重度までかなりの幅を持っていた. 出生直後の短時間窒息状態のケースでは画像上の変化はなく, 脳性麻痺にもならなかったが発達過程では手指操作での協調性の乱れがみられた. これらから出産時仮死による脳障害は臨床的には全か無かではなく, 一定の境界領域を持つと思われる. 最重度と思われた例でも一定の知的反応を示していた. 新生児期の経過と臨床像の推移を比較することは, 障害の診断, 発達予測, リハビリテーションにおいて重要であることを強調したい.
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© 日本小児小児神経学会
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