脳と発達
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肝移植後に内側側頭葉てんかんを発症したWilson病の1例
免疫抑制剤FK506 (tacrolimus) の副作用
鈴木 保宏植田 仁鳥邊 泰久位田 忍
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2001 年 33 巻 4 号 p. 342-346

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抄録

内側側頭葉てんかん (MTLE) の発症に免疫抑制剤FK506 (tacrolimus) の関与が疑われた男児例を報告する.乳幼児期にけいれんの既往なし.7歳時に劇症肝炎型Wilson病を発症し, 発症13日目に生体部分肝移植を施行した.術後18日目に全身強直性けいれん, 意識障害が出現し, FK506脳症を疑いFK506を中止し症状は消失した.術後3カ月よりFK506を再開したところ, 術後13カ月より口部自動症を伴い右上肢を伸展強直させる複雑部分発作が出現した.発作間歓期の脳波で左前側頭部に棘波が散発し, MRI, SPECTで両側海馬に病変 (左側優位) を認め, MTLEと診断した.発作は短期間に難治化し, 記銘力が低下した.FK506投与を再び中止し記銘力の速やかな回復を認めたが, 発作, 画像所見には変化はなかった.FK506が海馬の障害を引き起こし, MTLE発症に関与した可能性が疑われた.

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© 日本小児小児神経学会
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