抄録
要旨日本のマスコミでは今, 着床前診断について盛んな報道が続いている. 神戸市の産婦人科医師による「独断実施」が明らかになり, 日本産科婦人科学会が大学医学部の臨床研究を承認したからだ. 私は医療を担当する新聞記者として, こうした流れの中に,「何が患者のための医療なのか」「生命倫理とは」という視点を加えて報道を続けてきた. この視点は, 日本の社会の中に過去10年ほどの問に芽生えてきた新しい概念である. 患者や家族は医療に対して何を期待し, 何を求めているのか. 医療が患者や家族に提供できるもの, できないものは何か. こうした点をしっかりとらえなおす時期がきているのではないだろうか.