抄録
脳性麻痺による歩行障害をもつ小児11例 (年齢2.4~11.5歳, 平均年齢5.6歳) に対し, A型ボツリヌス毒素 (Botulinum toxin A, 以下BTA) 療法による下肢痙縮と歩行機能の改善を試みた.治療は腓腹筋, 大腿内転筋群と内側ハムストリングに行い, 総投与量を最大8単位/kg (上限100単位) とした.治療4週後には, 全例で有意な下肢痙縮と歩行機能の改善を認めた.また, 短下肢装具の装着困難や着替えなどの介護負担が軽減する副次的効果を得た.全身的・局所的な副作用や有害事象は認めなかった.BTA療法は, 比較的簡便かつ安全に施行でき, 短期間で顕著な効果を示す内科的対症療法であり, 我が国でも行われるべき治療と考えられた.