脳と発達
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先天代謝異常と脳波
飯沼 一宇
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キーワード: 先天代謝異常, 臨床脳波
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1975 年 7 巻 3 号 p. 213-221

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抄録

先天代謝異常症について, 以下の各自験例の脳波所見を検討した.
フェニールケトン尿症では, 12例のうち, 治療前脳波が正常1例, 境界領域1例, 異常10例であり, 低phenylalanine (Phe) 食治療後の脳波で改善をみたものは7例中5例であつた. Phe負荷後にけいれんの再発をみ, 脳波の徐波化のみられた例があつた.
高バリン血症では3ヵ月時の脳波は棘波を認め, 低バリンミルクを6ヵ月使用した1才5ヵ月ではほぼ正常となつた. 3才8ヵ月で普通の食事をとるとδ波が増加した.
これらの代謝疾患においては, 主として代謝産物の過剰が脳機能の異常に関連していると考えられた.
Vitamin B6依存性けいれんでは, B6中断により発作波が頻発するが, 静注6分で発作波は消失した. この疾患では脳のglutamateが過剰となり且っGABAが不足すると考えられ, B6により両者の関係が改善されると期待されるが, これにより脳波が改善すると推測された.
Phosphoribosylpyrophosphate (PRPP) synthetase欠損症では, 10ヵ月でhypsarhythmiaを呈したが, ACTHの筋注により若干改善され, 同時に酵素活性の上昇をみた. hypsarhythmiaに対するACTHの効果の一つには障害酵素の活性を上昇させるためもあり得るだろうことが示唆された.
Tay-Sachs病においては, 初期に低電位速波を呈し, 1才ごろから棘波の出現をみ, 徐波が混入してくるが, 2才をすぎるころから, 低電位の傾向となり, 3才をすぎるとほぼ平坦脳波を呈した.
Krabbe病では, 正常脳波から高圧徐波となり発作波を混入してしだいに不規則性を増す. これらの脳脂質症では脳波の推移が病勢の進行を知る0つの手がかりとなると思われた.

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© 日本小児小児神経学会
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