大阪歴史博物館研究紀要
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土師器甕を加工した甑
渡来文化受容の一事例
寺井 誠
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2015 年 13 巻 p. 25-34

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抄録

5 世紀前半頃の日本列島は、朝鮮半島からさまざまな新文化を受け入れ、自らの文化を変えていく時代である。甑もそのひとつで、朝鮮半島の技法・器形を忠実に真似ることによって導入するのであるが、ごく一部に、煮炊きに使われていた在来の土師器甕の底部に蒸気孔を穿ち、甑に加工した事例がある。このような甑は大阪府茨木市の安威遺跡、奈良県御所市の南郷千部遺跡、岡山市の高塚遺跡で出土している。3 遺跡では朝鮮半島的な文化要素は多分に見られるものの、甑については器形・技法が忠実に採用されたものが少ないという共通点があり、何らかの理由で甑が必要になった際の臨時的措置と考える。これは新文化の導入を我流で試みたものの、普及しなかった一例でもあり、渡来文化の受け入れに際しての試行錯誤の過程を示している。

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