抄録
淀川を漁場とする二人の川漁師からの調査にもとづき、漁場である河川や漁獲対象である魚に対する川漁師の自然観を追求した。河川に対する自然観としては、魚のよくとれる漁場を「米櫃」と捉える自然観が存在し、しかもその自然観が淀川だけではなく、荒川のほか、海の漁撈においても認められることを指摘した。また漁場の占有と秘匿の慣行をめぐって漁場を媒介とする「人と人の関係性」にオモテとウラの二面的なあり方があることを指摘した。さらに魚に対する自然観としては、淀川の川漁師の「魚のことは魚に聞け」ということばを手がかりにして、自然と人を対立的にとらえるのではなく、並立的に捉えようとする自然観が淀川の川漁師のあいだに存在し、それが利根川・長良川・木曽川など広い範囲の川漁師にも共通して認められることを明らかにした。