前期・後期難波宮の造営には膨大な資材が使われたはずであるが、その実態はほとんどわかっていない。材木についても、どの地域のものが使用されたのかという点については、先行研究がない。本稿では、難波宮造営に特徴的に使用されたコウヤマキに注目することにより、播磨国や西摂地域の材木が使用された可能性があることを示した。この地域の大河川を筏で運ばれた材木は、海洋筏によって難波まで運漕され、難波宮の造営その他に使われるとともに、淀川をさかのぼらせて、平城京や平安京およびその周辺で使用された。播磨国や西摂地域からの材木の流通を新たに考慮することにより、それが集散する難波地域の経済的位置・都市的機能を再検討する必要が生じる。