日本温泉気候物理医学会雑誌
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原著
健常男性への炭酸温水足浴による循環系と自律神経の急性変化
許 鳳浩小川 弘子上馬場 和夫王 紅兵関根 道和鏡森 定信
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2009 年 72 巻 3 号 p. 216-228

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抄録
 炭酸ガスは、浸水部皮膚や筋肉に浸透し、local tissue acidosisを惹起して、 NO-cGMP 系の活性化、NO 生成の促進により末梢血管を拡張させると推定されている。炭酸温水足浴の局所と全身的な作用機序について、淡水足浴と比較することで考察した。健常成人男性15名(24-53歳:31±10歳)を対象に、38°C、30分間の炭酸温水足浴(モジュール攪拌型人工炭酸温水装置、溶存炭酸ガス濃度1100±100ppm、pH4.8)と淡水足浴(pH 7.4)、対照座位を無作為の順序で体験させ、その前 5分間、最中、後 10分間における生理的変化を測定した。測定項目は、舌下温、心拍変動(低周波数成分 LH と高周波数成分HF)、血圧、レーザードプラーによる浸水部(足部)と非浸水部(僧帽筋部)の皮膚血流速度とした。
 その結果、炭酸温水足浴開始後 5分目に、淡水足浴よりも副交感神経優位状態(HF/(LF+HF)の有意な高値)が起こることが示された。足浴開始後10分目からは炭酸温水浸水部において、淡水浴以上の皮膚血管拡張が起こり、最後の30分目まで継続した。炭酸温水足浴も淡水足浴でも同様に、最後の 30分目頃には舌下温の有意な上昇を認めた。その上昇に伴い、淡水足浴では、心拍変動(LF/HF比)において、対照よりも交感神経優位状態を示したが、炭酸温水足浴では有意な変化を認めなかった。1100ppm、38°C炭酸温水足浴開始直後5分目の副交感神経優位状態は、炭酸と淡水とで舌下温に差がないことから、皮膚への温熱刺激やpHの違いが、侵害受容イオンチャンネルTRP-V(Transient receptorpotential-vanillod)や、酸感受性イオンチャンネル(ASICs:Acid sensitive ion channels)などを介して体性自律神経反射の差を来すことで惹起されたことが推定された。
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© 2009 日本温泉気候物理医学会
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