日本温泉気候物理医学会雑誌
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原著
若年女性の冷え症に対する温筒灸治療部位の検討
—膝陽関(GB33)と三陰交(SP6)との比較試験—
百合 邦子坂口 俊二鍋田 理恵久下 浩史若山 育郎
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2014 年 77 巻 3 号 p. 237-249

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抄録

目的:本研究では、若年女性の冷え症に対する温筒灸治療の効果を、膝陽関(GB33)穴と三陰交(SP6)穴との比較試験で検討した。
方法:対象は女子大学生13名(平均年齢20.7±1.3歳)とした。対象者を坂口らの判別分析による判定法に身長を考慮し、膝陽関群(6名)と三陰交群(7名)とに割り付けた。1週間の前観察期間を経て、介入期間には各経穴について温筒灸(長安NEO、山正)1~2壮を週2回で4週間行った。介入期間終了後2週間を追跡期間とした。評価には冷えを含む14症状の6件法と冷えの程度をVisual Analogue Scale (VAS)で回答する独自の評価票(冷え日記)を用いた。
結果:13名中3名は前観察期間終了後に脱落し、解析対象は両群とも5名となった。2群間で年齢、身長、体重、BMI、VAS、愁訴得点などの初期値に有意差はみられなかった。VASおよび愁訴得点は、何れも群間と試験期間との間に交互作用はみられなかった。群別では、両群ともVASは前観察期間に比して介入期間、追跡期間とも有意な変化はみられなかった。愁訴得点については、両群とも介入開始より漸次減少したが、膝陽関群で介入期間3・4週目、三陰交群では介入期間4週目と追跡2週目で前観察期間と比して有意に減少した。また、愁訴得点を項目別に検討すると、膝陽関群には肩こり、口の乾きに、三陰交群には肩こり、口の乾き、イライラで有意差がみられた。具体的には、膝陽関群では肩こりは追跡期間1・2週目で有意に減少し、口の乾きは介入期間3・4週目で有意に減少した。一方、三陰交群では、肩こりは介入期間2・4週目、追跡期間1・2週目で有意に減少し、口の乾きは介入期間4週目、追跡期間2週目において、イライラは介入期間1・2・4週目に有意な減少を示した。
結語:若年女性の冷え症に対する温筒灸治療は、膝陽関穴、三陰交穴ともに外気温が低下しても冷え症を悪化させることなく、随伴愁訴を改善させることが示唆された。

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© 2014 日本温泉気候物理医学会
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