日本温泉気候物理医学会雑誌
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原著
登別市で救急要請があった入浴関連事故における身体医学的状況,環境因子及び事故発生施設からの検討
西川 浩司
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2016 年 79 巻 2 号 p. 130-145

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抄録
  入浴中急死は本邦に特有の現象で,病院外心肺停止の10~15%を占めるとされ,現在正確な入浴関連死亡件数の把握は困難であるが,死亡者は年間10,000人を超えていると推測されている.また,高齢者のそれに至っては,交通事故死亡者数を上回ると言われ,増加の傾向にある.
  登別市において発生した入浴関連事故について身体医学的状況,環境因子及び事故発生施設から検討するため,登別市消防署救急救助隊に協力を得て調査票を記載してもらい,2014年4月1日から2015年3月31までの調査期間で52症例が回収され,データの解析を行った.
   男性27例の平均年齢は70.7±18.2歳,女性25例は64.4±20.5歳で,事故発生件数には性差はないが,男性患者の平均年齢が高い傾向にあった.
  心肺停止は11例あり,男性8例,女性3例と男性に多い傾向であり,事故発生月は11例中10例で11月から3月の冬期間に発生していた.
  今回の調査で,飲酒と事故発生やその重症化の間に統計学的な相関は認めなかったが,男性に重症例が多い原因として,登別温泉ホテル・旅館において,飲酒が多いことによる可能性は否定できなかった.また,飲酒による重度泥酔症例を経験し,脱水や水没・溺水の誘因になると考えられ,大量の飲酒後の入浴は厳に慎むべきである.
  事故月別発生件数と登別市の月別平均気温の相関を統計学的に検討したが,自宅においてr=-0.70,P<0.05と,気温の低下とともに入浴関連事故発生件数が有意に増加していた.患者自宅においての入浴関連事故は,登別温泉ホテル・旅館での入浴と比較し,患者平均年齢,浴室や脱衣所と居室の温度差などが異なっている可能性があり,入浴関連事故防止対策をそれぞれ別に講じる必要があると考えられた.
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© 2016 日本温泉気候物理医学会
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