日本温泉気候物理医学会雑誌
Online ISSN : 1884-3697
Print ISSN : 0029-0343
ISSN-L : 0029-0343
原著
入浴時警戒情報発令による浴室内突然死の予防効果について~発令初年度の報告~
勝山 碧林 敬人
著者情報
ジャーナル フリー

2026 年 89 巻 2 号 p. 57-65

詳細
抄録

  【背景】本邦における浴室内突然死(入浴死)は高齢社会を背景に増加傾向にあるが,正確な病態機序は解明されていない.一方で,予防システムの構築は喫緊の課題であった.我々は入浴死予防システムとして,他機関と連携して入浴時警戒情報を発令した.

  【方法】2006~2019年の間に鹿児島県警が取り扱った入浴死全検視例のうち,冬季に発生した1,133例を対象に統計解析を行った.鹿児島県を県警の管轄別に分け,各地における入浴死発生頻度の高い環境気温を特定し,入浴時警戒情報として2023年11月~2024年2月に様々なメディアを通して発令した.発令した入浴時警戒情報が入浴死増減に影響を与えたか,入浴死者数の発令前と発令後の比較検討を行った.また,分野ホームページ(HP)等に備えたアンケート結果を解析し,入浴時警戒情報の浸透度を評価した.

  【結果・考察】入浴時警戒情報発令前と比較して,発令後の総入浴死者数には有意な減少はみられなかったが,60歳代以下の死者数及びその割合は,いずれも有意に減少した.発令期間中に本分野HPにて実施したアンケート回答者の80%は60歳代以下,LINEアプリの友だち登録者も76.7%は60歳代以下であったことから,入浴時警戒情報が浸透した年代に対しては入浴死の予防効果があったものと判断した.

  【結語】入浴時警戒情報を受け取った年代に対する入浴死発生予防効果が明らかとなった.一方で入浴死は65歳以上が90%を占めており,70歳以上の世代への広報方法が今後の課題である.

著者関連情報
© 2026 日本温泉気候物理医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top