日本温泉気候物理医学会雑誌
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原著
寒冷地における浴室暖房乾燥機設置率と浴槽内での溺死及び溺水の関連:生態学的パネル解析
野城 聡志
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2026 年 89 巻 2 号 p. 66-76

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抄録

  入浴関連死は年間1万人以上と推計され,公衆衛生上重要な課題である.しかし,溺死や転落などの外因死亡と,疾病に起因し得る入浴中急死の双方を含むため,人口動態統計のみから全体像を把握することは容易ではない.この制約の下で,人口動態統計の死因基本分類のICD-10コードW65「浴槽内での溺死及び溺水」およびW66「浴槽への転落による溺死及び溺水」の死亡数(以下,W65/W66死亡数)が代替指標として用いられてきた.浴槽内溺死は冬季に多く,低気温との関連も示されている.2023年住宅・土地統計調査で新規調査項目として追加された浴室暖房乾燥機設置率を用い,設置率とW65/W66死亡数の関連が寒冷地と非寒冷地で異なるかを検討した.2015〜2023年の都道府県×年パネル(47都道府県,423観測)を構築し,W65/W66死亡数をアウトカムとして,期待死亡数の対数をオフセットとした負の二項回帰を推定した.曝露は浴室暖房乾燥機設置率とし,2023年値を2015〜2023年の全期間に準固定した.寒冷地は年最低気温(2015〜2023年平均)が下位1/4の都道府県と定義し,設置率10ポイント増加あたりの交互作用IRRを評価した.主要解析の交互作用IRRは0.460(95%CI[0.222, 0.951])であり,非寒冷地に比べ寒冷地で低下方向の関連がより強く示唆された.感度分析でも方向性は概ね一貫していた.集計データに基づく生態学的解析であり,交絡の影響を完全には排除できないため,因果的解釈は慎重を要する.

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