音声研究
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特集「最適性理論の実験検証と実験音声学の理論整備」
'pun'にない「駄洒落」の柔軟性 : 日本語の言葉遊びからの証拠(<特集>最適性理論の実験検証と実験音声学の理論整備)
大竹 孝司
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2010 年 14 巻 1 号 p. 76-85

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抄録
本研究は,心理言語学の領域における音声言語の語彙認識の研究で提案されている語彙候補活性化モデルの観点から,話し言葉としての日本語の駄洒落のメカニズムについて考察を試みたものである。このモデルでは,聞き手は話し言葉の個々の単語を直接認識するのではなく,類似した音構造を持つ複数の活性化された単語の中から競合を経て目標の単語を選択するとしている。その際,候補となるのは話者が意図した単語のみならず,単語内や単語間に潜む「埋め込み語」が含まれる。本研究では,即時性を伴う言葉遊びと「埋め込み語」の関係を明らかにするために日本語の駄洒落のデータベースの分析を行った。その結果,駄洒落には同音異義語と類音異議語に加えて単語に内包された単語や外延的な関係にある単語も利用されていることが明らかになった。この結果は,駄洒落では活性化された候補群から最適のものが選択されていると解釈される。このことは駄洒落では候補が英語のpunなどよりも広範囲から選択されるためより自由度の高い言葉遊びであることを示唆している。
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© 2010 日本音声学会
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