音声研究
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研究論文
アメリカ英語・韓国語・日本語母語話者による音節末鼻音の同定
Takeshi NOZAWASang Yee CHEON
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2012 年 16 巻 2 号 p. 5-14

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抄録
本研究は,1音節語の語末に現れる調音位置の異なる鼻音を,アメリカ英語,韓国語,日本語の母語話者がどのように同定するかを分析したものである。資料は,アメリカ英語,韓国語の母語話者が/CVC/の枠組みで発話した刺激語,日本語は,/CVNCV/の枠組みで発話したものから2番目のCVを削除した刺激音で,撥音/N/が[m, n, ŋ]となる音節を用いた。このようにして調音位置の異なる鼻音が語末に現れる1音節の音声刺激をアメリカ英語,韓国語,日本語で作成した。これらをこの3言語の母語話者に提示し,語末の鼻音の同定実験を行った。英語話者と韓国語話者はそれぞれの母語に語末での鼻音間の音素対立があるのに対し,日本語ではこの位置での鼻音間の音素対立がないため,日本語話者の正答率が最も低いことが予め予想されたが,実験結果は,この仮説を裏付けるものとなった。日本語話者は誤答パターンにおいても他の2言語の話者と異なる特徴を示した。日本語話者は[ŋ]を[n]と知覚する傾向が強いのに対して,英語話者と韓国語話者は[n]を[ŋ]と知覚する傾向が見られた。
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© 2012 日本音声学会
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