抄録
本橋では,入力表示というものが,音韻文法における制約違反を最少限にする形で調整されることを立証する。この点を立証するため,英語の音韻現象からいくつかの事例(強勢移動,鼻音接頭辞における同化,子音接辞をめぐる有声同化と母音挿入)を取り上げる。この操作はいわばレキシコンの最適化(lexicon optimization)の一種として扱われるものであり,文法全体が中立的な状態で予測されるよりも制約違反が少なくなるよう抑制されることになる。さらに,この仮説の帰結として,音韻パターンの新しいデータ資源をも提供できることを立証したい。それにより,ここで取り上げる事例に関して,英語音韻論の中で長く決着のつかなかった問題が,入力の最適化を通していかに解決されるかが明白になる。