2013 年 50 巻 p. 117-125
本稿は、運動技術の特質に基づいた系統的指導を、遊びの中に意図的に配置する実践の方法について検討するものである。取り上げた対象は、水泳の技術に繋がる幼児期の水遊びである。本論では次の点を検討した。①幼児期に習得・習熟されるべき基礎的運動能力を整理し、「およぐ」動作が移動系の動作・姿勢変化平衡系の動作に属し、基礎的運動能力との関連では姿勢制御の力に該当することを確認した。②運動技術の特質を中心に構成した遊びの実践という視点から、水泳初心者の指導における基本技術である呼吸法の習得を位置づけた遊びの実践例を検討した。「およぐ」動作の習熟は呼吸法の習得を前提とするからである。水遊びを紹介する文献には、呼吸法の指導を一切せず伏し浮きをさせるものもある。③陸上の遊びからプールの遊びに至るまでの呼吸法の指導に関する実践例を検討した。「およぐ」という運動文化の獲得は、遊びの中で遊びの面白さを追求しながら、指導者が呼吸法の練習を意図的に配置することによって可能となる。