耳鼻咽喉科展望
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臨床
鼓膜緊張部癒着に対するcartilage tympanoplastyの有用性
田中 康広小島 博己吉田 隆一内水 浩貴山本 和央森山 寛
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2009 年 52 巻 1 号 p. 16-22

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抄録
癒着性中耳炎もしくは中耳真珠腫において鼓膜後上部や後半部に癒着を認める症例では, 術後同部位に再陥凹や再癒着をきたしやすく, 聴力改善成績も不良であることが多い。これまでに形成鼓膜に鼓室換気チューブを留置する方法やシリコン板を用いた段階手術など様々な工夫を施してきたが, 術後成績は芳しいものではなかった。そこで, このような症例に対し術後鼓膜の再陥凹を防止する目的でcartilage tympanoplastyを試みた。そしてcartilage tympanoplastyを施行することにより術後鼓膜の形態変化や術後聴力成績にどのような影響を与えているのか検討を行った。その結果, 術後鼓膜の再陥凹や再癒着がなく, 良好な鼓膜形態が維持された症例は18耳中17耳, 94.4%と高率に認められた。また術後聴力成績は全体で62.5%の成功率であり, III-cでは77.8%, IV-cでは42.9%の成功率であった。この結果はこれまでにわれわれが報告した術後成績と比較して良好なものであった。
以上の結果より, cartilage tympanoplastyは鼓膜緊張部に癒着を認める症例に対し術後の鼓膜形態や聴力改善の点からも従来の方法よりも優れた術式と考えられた。しかしながら, 観察期間が5年と短期間での術後観察であるため, 今後長期的な予後についても検討したい。
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© 2009 耳鼻咽喉科展望会
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