耳鼻咽喉科展望
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前頭蓋底の再建術式の標準化と外傷への応用
力丸 英明清川 兼輔
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2009 年 52 巻 4 号 p. 226-234

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抄録

前頭蓋底の再建において, 有茎の局所皮弁である側頭筋骨膜弁と前頭筋骨膜弁は大変有用な再建材料である。これらの再建材料の解剖と血行を熟知して局所皮弁として適切に用いることで, 前頭蓋底の再建術式はその安全性が高まり標準化された。したがって, 当施設では外傷や先天異常の症例に対しても応用している。
前頭蓋底の再建とは, 硬膜欠損部をwatertightに再建すること及び頭蓋腔と鼻・副鼻腔を確実に遮断することである。硬膜欠損部の再建には, 薄くしなやかで血行を有する側頭筋骨膜弁が最適かつ最善である。側頭筋骨膜弁が血行を有することで, 術後早期に硬膜欠損部がwatertightとなり鼻腔からの逆行性感染に対する強力なバリアーとなる。したがって, たとえ頭蓋底に感染が生じたとしても局所感染に留まり髄膜炎や脳膿瘍などの重篤な合併症は回避される。また, 前頭筋骨膜弁の筋体の部分で頭蓋腔と鼻・副鼻腔との確実な遮断を行う。前頭蓋底に骨移植を行う場合は, 前頭筋骨膜弁より頭蓋腔側に移植を行うことで移植骨が鼻腔側に露出しないことに留意する。前頭蓋底の再建手技を外傷に応用する場合には, 篩骨蜂巣の削除と蝶形骨洞の開窓による鼻腔側へのドレナージが再建を成功させるうえで大変重要である。
本術式を用いて53例の前頭蓋底再建を行った。5例に頭蓋底の局所感染を認めたが局所のデブリードマンと洗浄処置によって治癒した。全例で髄膜炎や脳膿瘍などの重篤な合併症は認めなかった。

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