耳鼻咽喉科展望
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綜説
聴性定常反応の臨床応用
青柳 優
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2009 年 52 巻 6 号 p. 426-439

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抄録

聴性定常反応 (auditory steady-state responce: ASSR) の歴史, 刺激音, 解析法, 起源, および臨床応用について述べた。他覚的聴力検査におけるASSRの最も重要な利点は, 正弦波的振幅変調音を用いた場合, オージオグラムの各周波数において周波数特異性の高い閾値を得ることができることである。正弦波状のその反応波形から, ASSRは高速フーリエ変換を用いたパワースペクトル解析やphase coherence法による閾値の自動解析に適している。ASSRの反応出現性は覚醒・睡眠により変化するので, 40Hz ASSRは覚醒時の成人, 80Hz ASSRは睡眠時の幼児における聴力検査に適している。それらの反応の起源については, 40Hz ASSRは聴性中間潜時反応 (MLR) の, また80Hz ASSRは聴性脳幹反応 (ABR) のsteady-state versionと考えられている。骨導ASSRは60dB以上の音圧においては信頼性は低いが, 伝音難聴の診断に有用である。80Hz ASSR閾値により500Hz以下の周波数の聴力レベルを評価することの難しさは, 聴覚フィルタによって説明できる。Multiple simultaneous stimulation techniqueを用いることによって両耳において4つの異なる周波数の聴力をABRより短い検査時間で評価することができる。さらにクリックによるASSRは新生児聴覚スクリーニングをより速く行うことができるであろう。音圧を連続的にsweepさせる刺激音 (sweep technique) によるASSRは補充現象の評価に, また音声刺激によるASSRは語音弁別能の評価に有用であると考えられる。これらのことからASSRは幼児や乳幼児における補聴器の他覚的フィッティングに役立つ。

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