耳鼻咽喉科展望
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臨床
鼓膜所見正常な耳小骨奇形の検討 (第2報)
—1998年から2007年における48耳について—
力武 正浩田中 康広小島 博己森山 寛
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2009 年 52 巻 6 号 p. 440-447

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抄録

耳小骨奇形は手術治療により聴力改善が期待しうる疾患である。おおよそ90%以上の症例が手術で改善を認めている。耳小骨奇形の病態には多様性があるが, 船坂らの分類がよく用いられ, 今回の症例もその分類を用いた。手術は症例により単なる耳小骨再建ですむものからアブミ骨手術を行わなければならないものまで多様であり, それに応じた手術技量が必要となる。
当科では以前に小島らが同様の耳小骨奇形72耳 (1984~1997年) について報告1) を行っているが, その後の10年間 (1998~2007年) で当施設にて, 聴力改善を目的として鼓室形成術およびアブミ骨手術を行った耳小骨奇形47例48耳を対象とした。船坂の分類ではI群 (I-S jointの離断) は25耳 (52.1%), II群 (ツチ骨またはキヌタ骨の固着のあるもの) は7耳 (14.6%), III群 (ツチ骨・キヌタ骨は正常だがアブミ骨の底板が固着しているもの) は, 8耳 (16.7%) であった。これらの合併している症例では, I+II群が4耳 (8.3%), I+III群が4耳 (8.3%) であった。以前の報告と比較するとI群が増加し, III群が減少傾向であった。
耳小骨再建法では, I型を施行した症例は2耳 (5.1%), II型が1耳 (2.6%), III-i型が1耳 (2.6%), III-c型が10耳 (25.6%), IV-i型が11耳 (28.2%), IV-c型が14耳 (35.9%) であった。アブミ骨手術を行った9耳の内訳は, small fenestra stapedectomy (以下SFS) が8耳 (88.9%), total stapedectomy (以下TS) が1耳 (11.1%) であった。手術による聴力の改善を日本耳科学会による「聴力判定基準 (2000年)」に基づいて判定した結果, 成功率は48耳中43耳 (89.6%) であった。
アブミ骨手術を行った症例が全体の18.8%であり, 単純な耳小骨形成から, アブミ骨手術を応用した術式まで必要になることがあるため, 術前の病態の評価と術者の技量が重要である。耳小骨奇形では手術による聴力の改善率が高頻度に得られるため, 積極的に手術加療を行うべきと考える。

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© 2009 耳鼻咽喉科展望会
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