小児科的治療における吸入療法は気道全域に存在するさまざまな病態に対して考慮される治療であり, 気道の保護, 酸素の供給, 薬剤の投与を目的とする。吸入療法を導入するにあたり, まず小児期の解剖学的, 生理学的特長を知ることが必要である。吸入効率を良好にするための条件や手技の検討がなされており, 最適な方法が選択されるべきである。また, 患者教育なしに効果的な吸入はできない。
耳鼻咽喉科でも小児の受診頻度が多い症状として咳嗽がある。慢性咳嗽として吸入療法が行われることも多いが, 診断に至るには困難も多く十分な聴診, 経過観察が重要である。小児科では気管支喘息が吸入療法の適応として十分なエビデンスもあり, 筆頭に挙げることができる。病態の理解とともに, 治療が確立されガイドラインも整備されてきた。小児でも吸入ステロイドを軸に治療を進めることが推奨されているが問題も多い。小児の吸入療法が発展するために検討すべき課題は残されており, さらなるエビデンスの蓄積が望まれる。