耳鼻咽喉科展望
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臨床
水痘帯状疱疹ウイルスによる舌咽・迷走神経麻痺の1例
杉崎 洋紀井坂 奈央増田 文子志和 成紀
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2012 年 55 巻 4 号 p. 223-229

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抄録

水痘帯状疱疹ウイルスの再活性化による脳神経障害として, 耳鼻咽喉科領域ではRamsay Hunt症候群の顔面神経・内耳神経障害がよく知られているが, それらの障害を伴わない下位脳神経障害が報告されている。今回我々は水痘帯状疱疹ウイルスの再活性化により舌咽・迷走神経麻痺を呈した1症例を経験したので報告する。
症例は37歳の男性で, 咽頭痛と嗄声, 嚥下困難を主訴に当院を受診した。喉頭蓋左側と左被裂部に粘膜疹を認め, 軟口蓋左側の挙上障害と左声帯固定, 左側優位な咽頭反射の減弱を認めた。血液検査でVaricella-Zoster Virus IgM, Varicella-Zoster Virus IgG共に上昇を認めた。水痘帯状疱疹ウイルスの再活性化に伴う舌咽・迷走神経麻痺と診断し, 抗ウイルス薬, ステロイド点滴治療を施行した。第11病日, 症状の改善を認め, 退院した。退院後2ヵ月で麻痺はほぼ消失した。現在退院後1年経過観察中だが症状の再発は認めていない。
水痘帯状疱疹ウイルスの再活性化に伴う舌咽・迷走神経麻痺では, 咽頭や喉頭に粘膜疹を認めないものの咽頭痛を伴うことがある。咽頭痛を伴う舌咽・迷走神経麻痺は, 粘膜疹を認めない場合でも, 原因として水痘帯状疱疹ウイルスの再活性化を積極的に疑う必要がある。

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