耳鼻咽喉科展望
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第35回 日本医用エアロゾル研究会
高齢者の口腔乾燥ケアにおけるヒアルロン酸配合洗口液スプレーの有用性
吉山 友二田代 陽子大島 崇弘橋本 いく子有海 秀人宮崎 智子川上 美好
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2012 年 55 巻 Supplement1 号 p. s56-s59

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抄録

高齢者における口腔乾燥状態は, 口腔領域だけでなく, 全身状態にも大きく影響すると考えられる。本研究では, 保険薬局における高齢者の口腔乾燥ケアの有用性を客観的評価から明らかにした。さらに, 薬局で可能な口腔乾燥に対する対処法の一つである保湿剤のヒアルロン酸配合洗口液 (商品名: 絹水スプレー) の有用性を検証した。
保険薬局に来局した65歳以上の高齢者を対象とし, 主観的 (患者アンケート) および客観的 (唾液湿潤度試験) に評価した。また, 口腔乾燥に対する対応の一つであるヒアルロン酸配合洗口液スプレーを使用し, その前後で唾液湿潤度試験を実施し, 口腔内の保湿効果を評価した。保険薬局に処方せんを持参した高齢者140名のうち, 口腔乾燥自覚者は54名 (38.6%) であった。主観的には, 口が渇く, 水をよく飲む, 口がネバネバするといった症状が認められた。唾液湿潤度試験では, 口腔乾燥の自覚症状をもつ患者が客観的にも乾燥状態にある傾向が示された。口腔乾燥自覚者における口腔内の唾液湿潤度は2.2±1.3mmから, ヒアルロン酸配合洗口液スプレー使用後には3.6±1.6mmと有意に改善した (p<0.05)。保険薬局における聞き取り調査により口腔乾燥状態が明らかとなった高齢者は客観的にも乾燥状態にあったことから, 保険薬局における日常業務において, 唾液湿潤度試験を実施することなく, 口腔乾燥の自覚症状を聞き取ることが有用であることを明らかにした。さらに, 口腔乾燥自覚者に該当した高齢者に対し, 保険薬局で可能な対応の一つであるヒアルロン酸配合洗口液スプレーを提供することの有用性が示唆された。保険薬局において口腔乾燥自覚者を積極的に見出し, 薬剤の適正使用を評価した上で, ヒアルロン酸配合洗口液スプレーの使用等によって適切に対応し情報提供することは, 高齢者のQOL向上, さらに健康寿命を延伸しうる新たな薬剤師の役割となりうると考えられる。

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