耳鼻咽喉科展望
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臨床
頸部膿瘍を来たした小児自己免疫性好中球減少症が疑われた1例
穐吉 亮平深美 悟中島 逸男山川 秀致今野 渉森 文月舘 利治平林 秀樹春名 眞一
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2013 年 56 巻 5 号 p. 253-257

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抄録
 自己免疫性好中球減少症は慢性好中球減少症の一つで, その頻度は10万人に1人と推定され, 軽微な細菌感染を反復し, 重症化するものは少ないとされる。今回われわれは, 頸部膿瘍を来した自己免疫性好中球減少症が疑われた症例を経験したので報告する。症例は1歳7ヵ月の女児で, 6ヵ月前より右急性中耳炎を反復しており抗菌薬を長期内服していた。1週間前より右耳漏の増悪と右頸部腫脹を認めたため, 当科を受診した。血液検査で炎症反応の上昇, CT で右顎下部と耳下部に膿瘍を疑わせる所見がみられたため, 精査加療目的に入院した。入院後より抗菌薬の点滴加療と膿瘍の穿刺ドレナージを施行した。血液検査にて白血球分画での好中球割合が3%と著明な好中球減少を認めたため, 骨髄検査を施行した。骨髄検査から内因性好中球減少症は否定され, 外因性好中球減少症と判断した。G-CSF の投与を行ったところ, 症状が軽快したため, 退院した。外来にて経過観察したが, 明らかな感染の再燃を認めなかった。抗好中球抗体は検出できなかったが, 初診時の血液検査所見と臨床症状, その後軽快していることより外因性では頻度の高い自己免疫性好中球減少症を疑った。乳幼児の耳鼻咽喉科診療において, まれながら本症例のような小児特有の病態があることを念頭に置き診療に臨む必要があると思われた。
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