抄録
伝音難聴をきたす中耳疾患に対し聴力改善手術を行う場合, 術前に耳小骨連鎖の状態を把握するために, 液体負荷骨導検査や耳小骨筋反射検査を行ってきた。2002年1月から2011年12月の10年間に, 当科で術前検査を行った症例のうち, 手術を行って実際の耳小骨連鎖の状態が判明した16例について検討を行った。内訳は, 耳小骨離断が10例で, 耳小骨固着が6例であった。液体負荷骨導検査の正診率は, 耳小骨離断例で80%, 耳小骨固着例で66%であった。耳小骨筋反射検査ではreversed pattern波形の出現で判断するが, 今回は16例中4例のみで出現したにすぎなかった。reversed pattern波形の出現した4例については, 3例で術前検査の結果と合致した。それぞれ正診率も高く, 有効な検査と考える。