耳鼻咽喉科展望
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筑波大学耳鼻咽喉科 原 晃教授就任十周年記念論文集
耳性頭蓋内合併症症例
中山 雅博吉村 知倫芦澤 圭中馬越 真理子廣瀬 由紀星野 朝文西村 文吾田中 秀峰上前泊 功田渕 経司大久保 英樹和田 哲郎原 晃
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2013 年 56 巻 Supplement1 号 p. s34-s39

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抄録

耳疾患が原因となって頭蓋内に炎症が波及する耳性頭蓋内合併症は, 抗生物質が発達した今日においてもその症状はきわめて重篤であり見逃してはいけない疾患である。今回, 我々は2002年1月から2011年12月までの10年間において耳性頭蓋内合併症を5症例 (S状静脈洞血栓症1例, 硬膜外膿瘍1例, 髄膜炎3例) 経験した。乳様突起炎に伴うS状静脈洞血栓症 (7歳, 女児) は抗菌薬による保存的加療で改善した。慢性中耳炎より発症した硬膜外膿瘍症例 (60歳代, 男性) は脳外科的手術, 耳科手術を行った。細菌性髄膜炎を反復した先天性内耳奇形症例 (40歳代, 女性) は手術により, 中耳-内耳の異常交通を遮断し, 以降, 髄膜炎は再発していない。また, 他2例は真珠腫性中耳炎から波及した細菌性髄膜炎であったが, 耳科手術を行った。耳性頭蓋内合併症の頻度は必ずしも高くはないが, その存在を常に念頭におき, 日々の診療を行う必要があると考えた。

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© 2013 耳鼻咽喉科展望会
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