耳鼻咽喉科展望
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筑波大学耳鼻咽喉科 原 晃教授就任十周年記念論文集
聴神経腫瘍ならびに神経線維腫症II型の臨床統計
和田 哲郎中山 雅博廣瀬 由紀中馬越 真理子西村 文吾田中 秀峰星野 朝文上前泊 功飛田 忠道辻 茂希田渕 経司大久保 英樹高橋 和彦瀬成田 雅光原 晃
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2013 年 56 巻 Supplement1 号 p. s43-s48

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抄録

1988年から2011年の24年間に, 当科を受診した聴神経腫瘍 (VS) 初回治療症例は187例であった。これらの内, 最終的に神経線維腫症II型 (NF2) と診断された症例は11例で, 10例は両側聴神経腫瘍により, 1例は一側の聴神経腫瘍と多発する髄膜腫と神経鞘腫により診断された。一側性聴神経腫瘍症例176例と神経線維腫症II型症例11例に分けてretrospectiveに検討を行った。
10歳代の一側性聴神経腫瘍が2例, 逆に60歳以上の神経線維腫症II型も2例みとめられたが, 平均年齢は一側性聴神経腫瘍が52.9±14.3歳, 神経線維腫症II型が39.0±18.1歳と神経線維腫症II型で低い傾向がみられた。
主訴はどちらも難聴が最も多かった。神経線維腫症II型では, 初診時から両側難聴であった症例は11例中4例と比較的少なかったが, ほとんどの症例で難聴が進行し, 最終的に21耳中12耳で高度難聴に至った。 (a) wait and scan, (b) 摘出術, (c) 放射線治療のいずれの方針によっても, 聴力温存の難しさが確認された。
聴神経腫瘍症例ならびに神経線維腫症II型症例について治療方針決定までのプロセスを検討した。一側性聴神経腫瘍では腫瘍径が治療方針に大きく影響したが, 神経線維腫症II型ではそれに加えて聴力の状態が重要な因子となっていた。十分なインフォームドコンセントを得て方針を決定することがこの疾患において必要と考えた。

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