耳鼻咽喉科展望
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臨床
後頭部皮下への進展を認めた巨大先天性真珠腫の1症例
内尾 紀彦小森 学山本 和央近澤 仁志谷口 雄一郎鴻 信義小島 博己
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2014 年 57 巻 1 号 p. 34-39

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抄録

 今回我々は乳突部から発生したと思われる先天性真珠腫が後頭部皮下へ進展した巨大真珠腫の1例を経験したので報告する。
 症例は68歳男性, 右耳痛を主訴に近医皮膚科を受診し, 炎症性粉瘤の診断のもと局所麻酔下に切除術が施行された。しかし腫瘤が深部まで及んでいたこともあり, 可及的に切除された後に閉創となった。その後症状が悪化したため, 他院耳鼻咽喉科を受診をした。側頭骨 CT 検査を施行したところ, 後頭部と連続する巨大真珠腫を認めたため当院へ紹介となった。側頭骨 CT では右耳の乳突部を中心として膨張性軟部濃度陰影を認め, 後方では後頭蓋窩の骨壁欠損を認めた。後頭部に進展していたこと, 後頭蓋窩硬膜との癒着が疑われたことから, 耳鼻咽喉科, 脳神経外科, 形成外科合同にて手術を施行した。真珠腫母膜を外耳道後壁から剥離し, 内容物を減量しつつ摘出した。硬膜との癒着はあったが剥離可能であり, 頭蓋内への浸潤は認めなかった。手術1年後の頭部 MRI では再発を認めなかった。後頭部の粉瘤様の腫瘤や乳突腔を占拠する骨破壊性の膨張性の病変を認めた場合, 極めて稀ではあるが本症を念頭に置く必要があると考える。

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