耳鼻咽喉科展望
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臨床
成人期に人工内耳植込み術を施行した髄膜炎後難聴症例の検討
池谷 淳河野 淳萩原 晃西山 信宏河口 幸江白井 杏湖依田 明治
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2015 年 58 巻 2 号 p. 75-83

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抄録

 髄膜炎は後天性難聴の原因のひとつであり, 髄膜炎後難聴は人工内耳の適応になりえるが, 内耳への炎症波及による蝸牛の線維化や骨化のため, 人工内耳の電極植込みが難しい場合や聞き取りが十分でない場合がある。 今回われわれは, 成人人工内耳症例390例中, 髄膜炎を失聴原因とする27例30耳について, 髄膜炎罹患年齢, 髄膜炎の原因となる細菌やウィルス, 手術時期, 髄膜炎罹患後から人工内耳手術までの期間, 術前の画像所見, 蝸牛内所見 (肉芽・線維化, 骨化の程度), 挿入電極数, 術後の成績についてレトロスペクティブに検討した。 術前 CT では, 異常なし23耳, 軽度石灰化5耳, 中等度石灰化2耳で, 術中蝸牛内所見では, 正常が20耳, 肉芽・線維化が5耳, 骨化が5耳であった。 蝸牛内所見別成績は, 正常群と線維化群の間には明らかな差はなかったが, 骨化群では装用閾値も聴取成績も悪かった。 今回は, 線維化や骨化により人工内耳の電極植込みができない例はなかったが, 少なくとも蝸牛内の組織変化が認められない早期の段階で手術を行うことが望ましいと思われた。

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