2016 年 59 巻 2 号 p. 99-103
近年, 手術患者の高齢化および手術適応の拡大に疑う余地はないが, 周術期の安全な患者管理の第一歩が適切な病態評価であることは不変である。 耳鼻咽喉科領域の周術期は, 手術が原因で危機的偶発症を引き起こす頻度は低いが, 術前からの併発症コントロールと麻酔導入時の気道確保操作の成否がアウトカムに大きく影響を及ぼす。 今回は, 併発する疾患のうち, 重症になる可能性の高い循環器疾患患者と, 脳血管障害を持つ患者を取り上げ, とくに注意を要する点について述べる。 また両者において内服している頻度の高い抗凝固・抗血栓療法の取り扱いについてもふれる。 複雑な病態を持つ患者の周術期安全管理には, 重症症例カンファレンス等の機会を利用した関係部署とのコミュニケーションおよび情報の共有化が重要である。