2017 年 60 巻 5 号 p. 231-237
症例は59歳男性, 喉頭癌 (右声門上) pT3N2cM0 SCC に対して喉頭温存目的に化学放射線療法 (NDP, 5-FU + RT40Gy/20Fr) 施行後, 喉頭全摘術施行後8年経過した時点で嚥下障害を主訴に当科を受診した。 上部消化管内視鏡検査にて残存咽頭から食道入口部に白色腫瘤病変を認めた。 CT 検査にて前頸部に18×30×20mm大の境界明瞭な腫瘤を認め, FDG-PET/CT でも同部位に SUVmax3.4g/ml の集積を認めた。穿刺吸引細胞診では class III atypical cell, 生検では炎症細胞を認めるのみであった。
以上の検査結果から本症例が喉頭癌治療後であること, 内視鏡所見では通常の良性腫瘍の所見とは言えないことなどから, 喉頭癌局所再発, 頸部食道癌などの悪性腫瘍の存在を疑い, 腫瘍切除術, 大胸筋皮弁による再建術を行う方針とした。 病理学的所見では, 核異型の強い紡錘形細胞の花筵状配列を認めた。 免疫染色では CD68 陰性, SMA 陽性, AE1/3 陰性, S100 陰性, Ki67 陰性であり, 以上から悪性線維性組織球症と診断した。 放射線照射8年後に生じた悪性線維性組織球症であり, 放射線関連軟部肉腫であると考えた。 放射線治療は根治性, 喉頭機能温存において優れた治療法であるが, 本症例のように放射線治療による晩期合併症の可能性も考える必要がある。