2018 年 61 巻 4 号 p. 222-227
今回われわれは, 開放性喉頭外傷にて受傷後嚥下機能をはじめ高度の喉頭機能の低下を認め, 3ヵ月の経過観察期間を経て常食摂取が可能となった1症例を経験した。
症例は54歳男性で, 前頸部を包丁で自傷した。 胸骨舌骨筋, 甲状舌骨筋, 甲状舌骨膜, 甲状喉頭蓋靭帯が切断され, 咽頭腔は開放されていた。 下気管切開を施行し気道を確保した後, 咽頭縫合と切断された筋の縫合を行った。 筋組織は挫滅が激しく, 正確な筋の同定は困難であった。 全身状態は順調に回復したが, 術後9日目の嚥下造影検査にて, 喉頭挙上が弱く誤嚥を認めた。 喉頭挙上障害の原因として, 舌骨上筋群は切断されていなかったが甲状舌骨筋が切断されていたこと, また外傷による炎症や循環不全により一時的な創部周囲の嚥下に関わる筋の機能不全が考えられた。 その後の嚥下訓練により嚥下機能は徐々に改善し, 術後約3ヵ月で問題なく常食摂取が可能となった。
今回は嚥下機能改善手術を施行せず, 喉頭蓋軟骨と甲状軟骨の縫合により, 常食摂取可能となったが, 一期的に喉頭挙上術に準じて甲状軟骨と舌骨の連結縫合を併せて実施していれば, 術後の機能回復期間を早めることができたと考えた。