2019 年 62 巻 1 号 p. 19-24
口腔インプラント治療に伴う上顎洞合併症であればこそ, 手術適応があれば, 低侵襲で患者の負担と不利益が少ない術式を可能な限り検討する必要がある。
低侵襲で患者の負担が小さい内視鏡下副鼻腔手術が, 耳鼻咽喉科では上顎洞迷入インプラント異物摘出術の第一選択であり, 耳鼻咽喉科医が果たす役割は少なくない。
局所麻酔下に下鼻道側壁から上顎洞を開窓する下鼻道経由の内視鏡下上顎洞迷入インプラント摘出術は, より低侵襲な術式である。
本術式の適応は, 上顎洞自然口が開存しており, 上顎洞炎を合併していない例, 下鼻甲介の基部が高位な例, 中鼻道自然口ルート・中鼻道が狭い例, 迷入インプラント体が上顎洞自然口・膜様部から遠位にある例, 上顎洞内側壁の骨が比較的薄い例, short type のインプラント体が上顎洞に迷入している例である。
本術式の非適応は, 上顎洞炎を合併しており, 上顎洞自然口・膜様部・中鼻道自然口ルートの開大が必要な例, long type のインプラント体が上顎洞に迷入しており, 下鼻道側壁の開窓部からインプラント体を摘出することが困難な例である。