耳鼻咽喉科展望
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臨床
Stapes Gusher を来した1例
高橋 昌寛山本 和央小森 学小島 博己
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2019 年 62 巻 1 号 p. 25-29

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抄録

 アブミ骨手術の際, 底板開窓時に脳脊髄液が噴出してくることがあり, stapes gusher と呼ばれ, 多くの症例で高度感音難聴を来すと言われている。

 今回, stapes gusher を生じたが術後聴力を温存できた症例を経験した。 症例は18歳男性で, 幼少期からの両側難聴を主訴に近医を受診, 混合性難聴の精査目的で当院を紹介受診した。 内耳や後迷路の奇形と先天性アブミ骨底板固着の合併などの病態や CT 所見からは蝸牛型耳硬化症も考え, 右アブミ骨手術を予定し手術を施行した。 手術時, 底板開窓した際に gusher を来したため, 開窓部とその周囲に筋膜を置き, 軟骨にて補強することで漏出は停止した。 術後聴力は大きな変動を認めず, 再燃を認めていない。 Retrospective に CT を確認すると内耳道の軽度拡張を認めた。 アブミ骨手術の術前に, 耳硬化症の所見だけにとらわれずに gusher 予測因子に十分注意することが必要である。

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