耳鼻咽喉科展望
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綜説
甲状腺眼症に対する内視鏡下経鼻腔眼窩減圧術
竹野 幸夫木村 徹石野 岳志堀部 裕一郎高原 大輔
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2019 年 62 巻 5 号 p. 198-208

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抄録

 甲状腺眼症 (Dysthyroid orbitopathy) はバセドウ病などに伴ってみられる眼窩組織の自己免疫性炎症性疾患であり, 眼球突出や眼瞼腫脹, 重症例では複視や視力障害をきたす。 活動性抑制にはステロイドや放射線外照射による治療が行われるが, 斜視, 高度の視神経症や眼球突出例の進行例は外科的手術の適応となる。 本稿では眼窩減圧術のひとつである内視鏡下経鼻腔眼窩減圧術について, 神経眼科医との連携, 文献的考察ならびに当科における手術方法と成績を紹介した。

 本術式は内視鏡下に眼窩内側壁を篩骨紙様板から眼窩先端付近まで, 上顎篩骨接合部 (the inferior-medial strut) を温存しつつ眼窩下壁は眼窩下神経の内側までを除去する。 減圧のための眼窩骨膜の切開方法は内直筋の上方と下方に2~3本の平行な切開を行う方法 (orbital sling technique) を用いている。 当科で施行した6例の成績では, 眼球突出度は術後平均 2.6mm の改善であり, 閉瞼困難・乾燥感などの眼症状の改善も認めた。 また圧迫性視神経症を呈した最重症例では視力回復が可能であった。 本術式は低侵襲でかつ整容面でも優れており, 眼科専門医との提携で甲状腺眼症に対する治療の一端を担っていけるのではないかと思われる。

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