耳鼻咽喉科展望
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臨床
反復する鼻出血にて診断された静脈奇形の1例
松井 秀仁松浦 賢太郎長舩 大士大平 真也梶原 理子山田 由貴和田 弘太
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2019 年 62 巻 5 号 p. 216-221

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抄録

 静脈奇形は頭頸部領域に多いとされるが, 副鼻腔に発生することは比較的稀である。 今回われわれは, 上顎洞に発生し, 鼻出血を反復した静脈奇形 (旧名称: 海綿状血管腫) の症例を経験したため若干の考察を加えて報告する。

 症例は16歳, 男性で鼻出血を主訴に当院を受診した。 既往や内服は特に認めない。 出血点の正確な同定は困難であったが, 右鉤状突起後面からの出血が疑われ, 同部位の焼灼止血処置にて止血が得られた。 6日後, 再度鼻出血を来し受診した。 止血処置を試みるも難渋した。 鼻腔内所見としては, 明らかな腫瘤性病変など特記すべき所見は認めなかったが, 出血部位や出血量など, 非典型的であったため, 精査目的に画像検査を施行した。 造影 CT 検査にて, 右上顎洞内に腫瘤性病変が示唆されたため, 造影 MRI 検査を施行したところ, 境界明瞭で強い造影効果を伴う腫瘍を認めた。 Dynamic study で早期から不均一な造影効果が得られ, 遅延相まで造影増強効果が遷延することから, 静脈奇形を最も疑った。

 内視鏡下鼻副鼻腔手術 (ESS) による摘出術を予定し, 術前に血管造影を行った。 栄養血管は右蝶口蓋動脈と右下行口蓋動脈であり, 選択的血管塞栓術を行った。 ESS では, 右前篩骨洞及び右上顎洞を開放し, 腫瘤を摘出した。 術中出血は少量で, 術後経過は良好である。 病理検査結果は静脈奇形であった。

 鼻出血は耳鼻咽喉科医にとって日常的に遭遇する疾患であるが, なかには本症例のように腫瘤性病変に起因する場合や, 血液凝固異常など器質的疾患が背景にある場合がある。 そのため, 非典型的な症例については積極的に画像検査を施行すべきと考えた。

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