耳鼻咽喉科展望
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臨床
内視鏡下で一塊に切除しえた鼻中隔多形腺腫の1例
宮村 洸輔大村 和弘森 恵莉鴻 信義小島 博己
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2020 年 63 巻 5 号 p. 228-234

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抄録

 多形腺腫は唾液線由来の良性腫瘍であり, その多くが大唾液腺に生じ, 鼻腔内での発生は稀である。 治療は外科的切除が基本であり, 一定の確率で悪性合併が存在し, 再発の可能性もあるため, 腫瘍の一塊切除が原則である。

 今回われわれは内視鏡下に一塊切除しえた鼻中隔原発多形腺腫の1例を経験した。 症例は54歳男性。 鼻閉を主訴に近医を受診し, 右鼻内の腫瘤性病変を指摘され精査加療目的に当院紹介となった。 CT 検査にて鼻腔内に限局する腫瘍性病変を認め, 内視鏡下鼻腔腫瘍摘出術を施行した。 腫瘍の鼻中隔軟骨・骨との癒着はなく, 切除断端を十分にとって摘出し, 病理組織学的検査にて多形腺腫と診断され完全切除を確認した。 現在外来で経過観察中である。

 これまで本邦で報告された鼻腔多形腺腫は157例である。 過去の報告の術式を調べると, 特に近年では内視鏡技術の進歩に伴い鼻内法が選択される症例が増えている。 腫瘍の大きさや位置によっては基部が確認できず術中操作が困難となるため, その適応を十分に確認し, アプローチ法を検討して一塊切除を目指すことが重要である。

 今回, われわれの用いた術式・手術戦略を紹介し, 近年発表された新規術式についても考察を加え報告する。

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