耳鼻咽喉科展望
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臨床
イクラおにぎりによる気管挿管を要した喉頭熱傷の1例
―電子レンジ加熱のリスク―
海老原 央露無 松里中条 恭子
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2021 年 64 巻 5 号 p. 297-301

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抄録

 喉頭熱傷は火事などで生じる気道熱傷上気道型と, 高温の飲食物摂取によって生じる局所の喉頭熱傷の2種類がある。 受傷後時間差を伴う喉頭浮腫を生じ致命的になり得ることから, 早期診断と気道確保が重要である。 飲食物による喉頭熱傷ではコーヒーや紅茶, シチューなどの液体による報告が多い。 食品の温度や形状に対しての認識が未熟な小児例や, 成人では飲酒後, 統合失調症, うつ病等の精神疾患の既往がある者, 総義歯装着中の高齢者の報告がある1)

 今回われわれは電子レンジで加熱したイクラ入りのおにぎりを摂取したことで気管挿管を要した喉頭熱傷の1例を経験した。 本症例は精神疾患の既往のない成人であり, 固形物による喉頭熱傷の症例であった。 さらに口腔内に熱傷所見がまったく認められなかった点が特徴的であった。 電子レンジによる加熱は素材そのものの特性により温度の上がり方が異なるため, 材料が不均一な食品を加熱した場合ホットスポットという極端に熱い部分が生じやすく, 本症例のようなケースに至る可能性がある。 気道熱傷を疑う症例での耳鼻咽喉科診療において, 診察時口腔内に熱傷所見がなくとも, 患者背景および状況から, はやめに喉頭所見を確認し, 増悪する咽頭痛や呼吸困難に注意する必要がある。

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