耳鼻咽喉科展望
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原著
血清可溶性インターロイキン2レセプターが異常高値を示した急性扁桃炎の1例
渡邉 菜月菊地 瞬武山 慧柳原 太一高津 南美子尾田 丈明豊川 怜子原山 幸久飯田 誠
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2023 年 66 巻 4 号 p. 156-160

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抄録

症例は58歳女性.発熱,咽頭痛,摂食困難を主訴に外来受診した.両側口蓋扁桃の発赤,白苔付着,右側優位の扁桃腫大認めた.急性扁桃炎の診断で抗菌薬点滴目的にて入院加療とした.抗菌薬投与後,咽頭痛は改善傾向にあったが,発熱が遷延し,右側優位の扁桃腫大も持続していた.入院中に施行した血液検査で血清可溶性インターロイキン2レセプター(以下,sIL-2R)が7,720 U/mLと異常高値であり,臨床経過からも悪性リンパ腫との鑑別が必要と考えた.腫大が持続していた右扁桃生検を施行したが,悪性リンパ腫の所見を認めなかった.抗菌薬継続にて症状改善を認め,第12病日に退院とした.sIL-2Rは2ヵ月後に正常範囲内まで低下し,右側優位の扁桃腫大も改善を認めた.

急性扁桃炎をはじめとする感染症でもsIL-2Rが上昇することは知られている.しかし,本症例のような異常高値の報告はない.本報告では,急性炎症でsIL-2Rの著明な上昇が起こり得ることを報告した.sIL-2Rが高いほど悪性リンパ腫の可能性が高まるが,様々な病態で上昇するため,他疾患の検討や臨床経過が重要であると考えた.

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